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ピアノ・エッセンシャルズ

第5位「異人たちとの夏」

★第5位「異人たちとの夏」

タイトルにある「異人」とは幽霊のことです。
物語は、シナリオライターの中年男が少年の頃に事故死してしまった両親の幽霊と出会い、思い出を語りながら夏の一時を過ごすという、一種のファンタージーです。原作は、脚本家の山田太一氏の同名小説です。私は映画化される前に、原作をすでに読んでいましたl。映画化されることを知り、当然山田氏自身がシナリオを書くのだろうと思っていました。ところが、実際にシナリオを書いたのは市川森一氏でした。なぜ山田氏は自分で書かなかったのか‥‥。
おそらく原作の幻想的な雰囲気を映像化するためには、自身より市川氏のほうが適していると、大林監督との間で合意に達したんだろうと想像しています。山田氏と市川氏の脚本家としての違いについては、整理がついたら、いずれ書いてみたいと思っていますが、簡単に説明すると‥‥。

山田氏は、現実社会を冷酷な視点で見つめ、極普通の人間の内面に潜む「冷酷さや狡さ」をリアルに描くのを得意とする作家です。それに対し、市川氏は逆に現実と非現実を行ったり来たりするような「大人のおとぎ話」的な世界を創り出すのがうまい作家です。
この映画のような「幽霊と現実に生きる人間との交わり」というテーマは、市川氏のドラマに度々登場します。大林監督もこの世界が好きなようで、脚本家に市川氏を起用したのは納得できる判断だと言えます。

この映画のみどころは、やはり全編に流れるなつかしさでしょう。夕暮れの浅草の町並み、古い木造アパート‥‥、そこに暮らす片岡鶴太郎と秋吉久美子の夫婦がとてもいい雰囲気を出しています。鶴チャンはこの映画あたりから、俳優・片岡鶴太郎として認められるようになったような気がします。片岡と秋吉の演技に較べると、風間杜夫と名取裕子は、ヌーボーしてシマリがありません。私としてはミスキャストかなと思っています。片岡たちがあまりにもハマっているので、相対的にそう見えてしまうのかも知れません。

ネタバラシになるので、詳しいことは書きませんが、名取の変身シーンは、やや興ざめな気がしないでもありません。まあ、見て判断してください。
ラストは間違いなく泣けます。

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